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人気作家と作品リスト(日本)

プロフェッショナルの卓越した技芸は、スポーツや芸能の世界において鮮烈に見せつけられることが多いが、ペン(パソコン)と想像力(創造力)をもって紡ぎ出した作品によって、人々を魅了し尽くす人気作家や物書きの筆力も特殊技能の極みと思わされる。『ハリーポッター』シリーズや村上春樹の新作が、発売前から読者を狂騒の渦に巻き込む光景に、その感を深くする。

作家を志す者にとって世に出るための登竜門といえば、昭和10年に創設された「芥川賞」と「直木賞」。毎年2回、1月と7月に受賞作が発表されるが、決定時はNHKもテロップで速報を流すほど権威ある賞となっている。

2009年度下半期の直木賞は、『ほかならぬ人へ』で白石一文氏が受賞した。ほかならぬ人へ 受賞記が文藝春秋誌に掲載されていたが、その顛末がなかなか凄絶である。編集者として出版社に勤務するかたわら、発表のあてもないまま作品執筆を続けていた白石氏は、夫婦不和から39歳にして発作的に家出してしまう。不安と不眠に苛まれながら、身を落ち着けた狭い部屋で卓袱台に向かって原稿を書き綴る日々だったが、ある日突然、パニック障害に襲われる。一時は死をも身近に意識した苦悶と挫折感に覆われながら、やむなく郷里へ戻り、身を休めて再起を期す。7ヶ月の休職を経て職場復帰したものの、仕事へのモチベーションはすでに喪失し、自分の人生にはもはや小説を書く以外に道は残されていないと覚悟を決めて退職。作家専業となってからほどなくしての朗報だった。

一方、芥川賞は今回該当作品なしという結果に終わった。芥川賞では、発表後『文藝春秋』にその作品全編が収録されるのが恒例だが、作品に先行して同じ誌上に掲載される全選考委員による「選評」も興味深い。委員によって評価が割れていることも多く、選考委員会の議論の緊迫が窺えると同時に、作家それぞれの文学観や人生観、パーソナリティも垣間見える。特に委員のひとり石原慎太郎の選評は毎回手厳しいことこのうえない。芥川賞の選考に際しては、過去も何度となく委員間で議論が白熱し、中には作品内容に抗議して委員が辞任する騒動も起きているという(『限りなく透明に近いブルー 』(村上龍)、『エーゲ海に捧ぐ 』(池田満寿夫)への授賞に異を唱えた永井龍男)。そもそも石原慎太郎の受賞時も、選考会が大紛糾したのだという。

石原慎太郎は昭和30年、一橋大学在学中に、若者の享楽的で無軌道な生態を『太陽の季節』に描いて芥川賞を受賞、たちまち人気作家となった。「太陽族」の出現を生むなど、社会的に一大センセーションを巻き起こしたことで有名だが、この作品をめぐっては、委員の間で賛否が激しく分かれた。特に佐藤春夫は、石原を「石原不慎太郎」と呼び、「この小説には文学が持つべき品格が著しく欠如している」と激しく唾棄したという。人気や話題の作品といえどもそれに対する文学的評価は、読者のみならず、作家、批評家等プロの視点によっても極端な異なりが生じる場合があることが知れる。

人気作品の「値うち」

文藝評論家の福田和也氏(慶応大学教授)が、作家の値うち2000年に『作家の値うち』という本で、人気文芸作品の序列化を敢行している。福田氏は、日本のエンターテインメント作品(大衆小説)と純文学作品を対象として、それぞれ気鋭の人気作家50人を取り上げ、各人ひとりにつき6冊以上の作品を9ヶ月かけて読了、合計574冊に100点満点で得点評価を行い格付けを試みたのである。

大物作家の売れ筋作品も含めて、時に辛辣かつ簡潔なコメントとともにきめ細かな得点を加えている。前代未聞の評価作業を終えた福田氏は、日本文学の豊穣、多彩、多様さに一定の満足を示しながらも、特に純文学の分野において若手文学者の質的低下が著しいことを憂えている(2000年当時のことではある)。引き続いて福田氏は、『「作家の値うち」の使い方』を上梓し、前作の反響、より具体的な評価基準や評価理由を補足・詳述している。

ちなみに『作家の値うち』において、最高得点96点を獲得したのは『仮往生伝試文』(古井由吉)、『ねじまき鳥クロニクル』(村上春樹)、『わが人生の時の時』(石原慎太郎)の3作品で、特に福田氏は石原氏を「作家としては2人といない人。天才ですね」と手放しで評価している。

Posted: 2 March 2010
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