キリスト教の歴史(「アブラハムの誕生」から「ヨハネによる福音書・ヨハネの黙示録完成」まで)をタイムラインとグーグルマップにマッピングしています。タイムライン上のリンクをクリックすると関連する情報が表示されます。タイムラインはドラッグまたはマウスのスクロールホイールで左右に動かすことができます。← →
年代については資料により諸説あり(特にイスラエル王国成立以前)、適宜多数説に従いました。
どんな伝統宗教においても絢爛たる固有の文化が存在しているが、世界で20億人以上の信徒を抱える最大宗教キリスト教ともなれば、それに根ざした文化的産物は周辺に事欠かない。まして何事にも欧米偏重の現代社会。多くの文学、映画、演劇、音楽、美術・工芸品などのモチーフやテーマに、直接的、間接的に旧約聖書の伝承やイエス・キリストの物語が多様に取り込まれている。それゆえ、キリスト信者にはならずとも、その歴史や聖書の内容に少しでも通ずることによって、関連する文化・芸術作品へいっそうの興味と関心をかきたてることができる。![十戒 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]](../images/phistory/ten_commandments.jpg)
そうはいっても、日本人に日頃なじみある仏教や神道とは教義・風習を異にし、深遠かつ神秘性も帯びたキリスト教。新約はまだしも旧約聖書の気宇壮大さは、それこそが醍醐味とはいえ、紐解き理解するのは容易でない。というわけで聖書のエッセンスを親しみやすく再構成、俯瞰した「聖書物語」の類が人気ともなる。
キリスト教の成立史は、イスラエル・ユダヤの興亡の歴史と符合する。創世記の冒頭に描かれるアダムとイヴ、カインとアベル、ノアの方舟、バベルの塔の物語はあくまで神話の世界だという。それに対して、続いて登場するアブラハムは実在した人物といわれる。歴史家は長らくアブラハムを伝説上の人物と評価していたが、彼が生まれ育ったと伝えられるウルの遺跡が発掘され、その町が隆盛を極めていた様子が明らかになるにつれ、アブラハムの生涯が信憑性を帯びるようになったという。
とすればアブラハムこそは、今に続く歴史の幕を切って落とした実質的な人といっていい。ヤハウェ神の啓示を受け、75歳のときにウルを旅立ち、ハランを経由して「約束の地カナン」に到着し、定住する。そして高齢になって授かった息子イシュマエルがアラブ人の父祖となり、その後生まれたイサクはイスラエル人の父祖となる。これによって、アブラハムはユダヤ教・キリスト教・イスラム教の始祖とみなされている。
信仰深い篤実なアブラハムが、神の命に従うままにパレスチナの地を与えられ、一族とともに居を定め、結果的にユダヤ人とパレスチナ人の共通の父祖となった。このことを、現代の深刻な中東問題やキリスト教とイスラム教の根深い相克などと重ね合わせたとき、神の所業の不可思議、歴史の不条理、皮肉、といったことばでは足りない、何とも実に考え込まされるものがある。
アブラハム以降、イスラエルの民は苦難と栄華を繰り返しながら波乱万丈の運命を辿る。エジプトで奴隷と化したイスラエル人を、モーセは一大決意のもとに解放に導こうとするが、不信心な民は神のさばきにあってアラビアの荒野を40年にもわたって彷徨うことになる。ヨシュアによってついにカナンに戻り、ダビデ・ソロモンの栄光の時代を経た後、外敵の侵入によって分裂・滅亡してしまう。かつての繁栄の再来を期待するイスラエル人の前に、ついに現れた救世主イエス・キリスト。そして弟子たちの艱難辛苦の克服によってユダヤ教から独立し、確立をみたキリスト教世界。
聖書に表現される普遍的・根源的ともいえる人間の身勝手な振る舞いや業(罪)の深さ、心の弱さは、自らの日常を顧みて身につまされるものがある。だからこそ救いを求める多くの人々の共感を呼び、拠りどころとなるのであろう。そして想像のみによって綴られたとは思えない入り組んだ人間模様と微細かつリアルに描写された数々のエピソード。一方でにわかに信じ難い奇跡や怪奇現象も縷々残されている。史実とフィクションの境いはどこにあるのか。聖書とキリスト教の世界は、壮大な歴史ミステリーの魅力もはらんでいる。
Posted: 24 June 2011
References: はじめてでも全体像がつかめる! 早わかり聖書|アブラハムの宗教|Abraham - Father of the Jewish Nation|
[聖書と考古学]アブラハムの故郷ウルは実在の場所|キリスト教の歴史

