森繁久彌氏が11月に96歳で亡くなった。晩年は後輩タレントの葬儀などに車椅子で現れ、涙ながらに慨嘆する姿が痛々しかった。
森繁は、俳優や歌手として映画、舞台、テレビでの活躍のほか、『知床旅情』の作詞作曲など多才ぶりを発揮したが、映画『社長シリーズ』が何といってもおもしろかった。今、「銀座シネパトス」では、「喜劇 みんなで笑い初め!」と銘打って、社長シリーズをはじめとした森繁の喜劇映画作品が追悼公開されている。
社長シリーズは、昭和31年に公開された『へそくり社長』を初作品として、
45年の『続社長学ABC』まで33作が東宝で製作された。仕事熱心だが遊び心も旺盛な社長役の森繁をはじめ、実直すぎて融通が利かない秘書役・小林桂樹、昔気質、古風で世話好きな部長役の加東大介、宴会や出張が大好きでお調子者の課長役・三木のり平、怪しげな日本語を操る日系人役のフランキー堺ら、個性的な登場人物がいつもながらのパターンで間の抜けた行動を展開する。
この社長シリーズを時代を経てあらためて見たときに、昭和の高度経済成長期の会社文化やサラリーマンの生態、当時の情景が覗けて興味深くもあり、懐かしくもある。例えば、
得意先やアプローチ企業への接待攻勢が日常的である。接待の成否・巧拙が仕事の進展に大きく影響する。三木のり平が何かというと宴席を設けたがり、森繁社長が最初は嫌な顔をするが、結局社長自ら率先して接待役を務める。接待費が、ふんだんにあったように見受けられる。
その接待の席で、接待側が謡曲や寸劇等の余興を披露する。森繁、三木、加東、小林らの宴会芸は抱腹絶倒で、この頃多くのサラリーマンが、実際にお座敷芸として彼らの芸を宴会の席で真似たそうである。酒は、日本酒の熱燗が多いように見える。二次会のクラブでは当然カラオケはないが、生演奏のバンドをバックに軍歌を歌ったりしている。
オフィスでは社員がソロバンをはじきながら、鉛筆、ペンで書類を作成している。
外国へ視察や出張へ行くのもおおごとだったようである。部下と家族が空港へ大挙して見送りや出迎えに赴く。壮行会が執り行われたりしている。外国人へのコンプレックスが強い。
男女がからむきわどい場面が社長シリーズではお約束だが、現在であればセクハラで大問題になるであろう男性の言動に対して女性が寛容で、愛嬌ですまされているケースが多い。浮気相手は水商売関係が多い。
社員同士の仲間意識や団結が、昨今の会社組織と比べて圧倒的に強い。職場とプライベートの境目があいまい、というか、ない。上司の家に部下が呼ばれたり、部下が上司を迎えに行ったり、勝手に押しかけたりすることが頻繁に行われている。
世話好きな上司が部下のためにお見合いを設定したがる。
口ひげを生やした幹部が多い。
居宅は木造家屋が一般的。銀座や丸の内は洗練されたビル群がすでに建ち並んでいるが、ビジネス街を離れれば、東京の街並みもまだまだのどかである。走行している車の形状は丸型が多い。
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喜劇ならではの誇張は当然あるにせよ、『社長シリーズ』からは、昭和の高度成長を担ったサラリーマンたちの、仕事にも遊びにもバイタリティーに溢れていた様子が伝わってくる。
Posted: 19 December 2009
Reference: Wikipedia



