毎年8月になると、原爆慰霊祭や終戦記念の式典が執り行われ、いやがおうでも戦争の悲劇と平和の尊さについて考えさせられる。テレビでも戦争を特集したドラマやドキュメンタリーが連日放映される。

日中戦争や太平洋戦争の惨禍を語る人たちの年齢は、多くが80歳半ばから90歳を越えるようになってきた。深く皺が刻まれた顔で時に涙ぐみ、口ごもりながら、乗り越えてきた体験を生々しく回想する。しかし、そこには言葉に尽くせないさまざまな思いが去来しているものと想像がつく。
戦争映画の感動巨篇、『プライベート・ライアン(Saving Private Ryan)』も、フランス・ノルマンディーのアメリカ兵戦没者墓地を訪れたひとりの老人が、一兵士の墓の前で泣き崩れながら過去を回想するシーンから物語がスタートする。
時は1944年6月6日早朝。「D-Day」として知られる連合軍のノルマンディー上陸作戦が敢行された日。ドイツ軍に対する連合軍の史上最大の反攻作戦として語り継がれるノルマンディー上陸作戦だが、トム・ハンクス演じるミラー大尉の所属する部隊が上陸したオマハ・ビーチでは、後に「血のオマハ」と称された慘害がいきなり米軍部隊を襲った。満を持して待ち受けていたドイツ軍防衛部隊の要塞からの凄まじい機銃攻撃を受け、上陸部隊はたちまち大殺戮の餌食となる。
『プライベート・ライアン』冒頭では、このオマハ・ビーチの攻防が30分近くに渡って描写されている。血しぶきを上げながら腕や脚をもがれ、悲鳴とともに絶命する兵士たち。上官を失い指揮系統を欠いて、混乱とパニックの極みに陥る様子などが、圧倒的な臨場感をもって迫ってくる。ハンディカメラによる映像で、観る者がまるで戦闘に加わっているような錯覚に陥る。
何とか敵陣突破を達成し、上陸を遂げたミラー大尉に程なくして、奇妙な指令が本国参謀本部から届く。市井のライアン家において、戦線に赴いた4兄弟のうち、3兄弟がほぼ同時に戦死したことをたまたま知ることとなった本国司令部首脳が、息子たちの無事帰還をひとり待つ母親に究極の悲劇を招来させてはならないとの配慮から、ノルマンディー付近に空挺部隊として降下したライアン家の末弟、ジェームズ・ライアンを探し出し、故郷に無事送還させよとの指令だった。
理不尽な思いを抱きながらも、ミラー大尉は自分を含む8人の小隊を編成。あてもないまま行方知れないライアン二等兵の捜索に出かける。しかし、そこは敵陣が支配する危険極まりない最前線。ただひとりの下級兵士の救出のために、装備の薄い部隊員の命が次々と失われていく。
ついに見つけ出したライアン(マット・デイモン)は、兄弟の死を告げられ涙にくれるが、他の空挺部隊員とともに当地での任務を果たすと言い張り、ミラー大尉による本国帰還の命令を拒否する。予想外の展開に戸惑いつつ、ミラー大尉もその戦闘に合流し、ドイツ戦車部隊の殲滅を指揮しながら、ライアンを必死で守り抜く。自軍の勝利を見届け、ライアンに「しっかり生きろ」と言い残してミラー大尉は息絶える。
時をはるか経て老いたライアンは、ノルマンディーのミラー大尉の墓の前で、「あなたが私にしてくれたことを決して忘れません」と改めて誓うのだった。
Posted: 28 August 2010
Reference: Best War Movies of All Time
戦争映画名作選
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